30年間戦った最後の日本兵・小野田少尉の映画
「映画ONODA一万夜を越えて」
2021年の映画です。
WOWOWでやっていたので初めてみました。
観た感想を私なりに書いてみます。
細かくは書きませんが一応ネタバレ注意です。
◆簡単に内容を言うと、、
終戦を知らずに30年間フィリピンのルバング島で日本兵として戦い暮らした小野田少尉のお話です。
小野田少尉がなぜ島に配属されたのか、苦境の中なぜ生き抜き任務を遂行し続けたのか。その生活ぶりとは。そして日本に帰るきっかけはなんだったのか。映画をみれば大体がわかります。
実はフランス人が原案の作品で、日本人俳優による日本語の映画です。日本、フランス、イタリア、ベルギー、ドイツが製作したそう。
ちょっとセリフの音量が聞き取り辛かったのは、私だけか?俳優さんは皆似合っており素晴らしかったと思います。
◆感想は…言葉にならない…
戦争と聞いて思い浮かぶものはなんですか?
平和、犠牲、原爆、死、特攻、お国のために…
人それぞれに色々なイメージや思いがあると思います。
この映画は戦争、そして終戦の形のひとつを見せてくれました。小野田少尉という残留兵の戦いと終戦を。良し悪しでは語れない、簡単な言葉では安易に話せないような気分になりました。
ただやはり戦争で犠牲になるのは、現場の兵士と巻き込まれる現地の住民であることは間違いなく。その人達の人生が自分自身のものでは無くなってしまう事が辛く悲しいと改めて感じました。
また、小野田少尉が特殊部隊学校で上官に言われていた「絶対に死ぬな。生き抜け。必ず迎えに行く。」という言葉も印象的でした。
当時の考え方は、国の為に戦い死ぬことは名誉あること。あとは万が一の時は自死することを教えられていたという印象があります。ラストサムライというか、武士道とかその精神論があった最後の時代。
実際に小野田少尉は親から短剣を渡され、万が一敵の捕虜になった際は…と言われていました。
個人的には、捕虜になって生き抜いて第二の人生を生きるチャンスを掴んでほしい…と、戦争で自死したエピソードを聞くと思ってしまいます。(相手国により捕虜になると壮絶な目に合わされるので、一概には言えないのですが…)
そんな中、死ぬな生き抜けと言う言葉はある意味斬新に見えました。(作戦の為とはいえ)そして小野田少尉が生き続けた理由の大きな一つでもありました。
この言葉を言った上官の谷口陸軍少佐が、後に本当に迎えに来てくれることになるとは…。
あとは生き抜いていく為と任務継続のために地元住民にかけた罪のことも、なんとも言えない辛さを感じました。綺麗事では語れないのが戦争…。
◆小野田少尉がなぜあんなに真面目だったのか
小野田少尉はジャングルに残され、敵(米軍)が撤退した後も現地に残り自分なりに任務を遂行し続けたその真面目さ。
小野田少尉のことが気になりググってWikipediaをのぞいてみて、その生真面目さを少し知る理由を見つけました。
お父さんが議員、お母さんが教師
兄弟も軍人
あぁ、家庭環境的にそういうご家庭だったのねと。
世間の雰囲気はもちろん、立派に国の為に働いてこそという家庭の雰囲気だったのかなと思いました。
◆意外な経歴
軍人になる前は輸入業の会社で中国で働いていたそう。中国語と英語が堪能なことを買われて特殊部隊のエリートになってしまった。
そして日本に帰国した後は、ブラジルにいた兄弟を頼り移住して牧場をしていたそう。日本にいるとマスコミや人の目が辛かった(当時マスコミの行動は酷かったそう)みたいですね。そりゃそうだ…。
それでも、帰国後も親兄弟が生きていたのはとても幸いなことだとも個人的には思います。家族に会えず死んでいった人、幸い帰国しても居場所がなかった人もいたでしょうから…。
◆小野田少尉を救った青年のこと
数人いた部下も死に、1人残ってなんとか生きていた小野田少尉を帰国させたのは、当時20代の冒険家の鈴木という若者でした。
鈴木さんは頭の良い方だったのでしょう。映画でみた小野田少尉とのやりとりには知性を感じました。ただ帰ろうと言い続けたり責めたりするのではなく同情し過ぎるのでもなく、ただ真っ直ぐに小野田少尉と話したいんだと言っていました。ただものではない。鈴木さんの人柄もあり、小野田少尉も心開いたのでしょう。
小野田少尉を帰国させた後、鈴木さんの人生はどんな感じだったのか気になりまたWikipediaをのぞいてみたところ、なんと衝撃なことが。
37歳の時にヒマラヤで亡くなられていました。
ご結婚され喫茶店を営みながら冒険・登山されていたよう。
植村直己さんという冒険家・登山家を思い出しました…。植村さんも登山中に遭難されてしまった。
37歳という若さで亡くなられて、本当に残念です。
小野田さんも鈴木さんの死を弔いヒマラヤを訪れたそうです。悲しい。
◆長々書きましたが、観てよかった作品でした。
戦争のことは一言で良し悪し言えないです。そして現代を生きる私たちや若い世代には、実感のない話でもあります。それは仕方ない。
ただ戦時中を生きた人達のことを思いそして知ることは、国の歴史や文化を知る意味でも、自分の人生を振り返ったり将来を考えたりする意味でも大切なことと思います。
小野田さんと鈴木さんが安らかにお休みになられていることを願って。